妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
道標
遥はその日の夜、蒼龍に会うべく、幻獣界へのゲートを開いた。
維鳴との話を相談しにいくために。
龍二には気づかれないようにするために、眠りの鈴を聞かせて朝まで起こさない術を施していた。
じいさんはというと、先に幻獣界へと帰らせ、本体に戻るよう指示している。
「伏して願い奉る
幻獣界への扉を開けし者に
道標を示したまえ」
塀に向かって言霊を言うと、陽炎がかかったように塀がぼやけ、札をそこへ投げる。
すると、ノイズや虫の羽音にも似た音が辺りに響き渡った。
何やら奇妙な空間が出来上がり、遥は迷わずそこへ飛び込んだ。
飛び込んだと同時に、その奇妙な空間は消え失せてしまい、そこはただの塀に戻っていた。
冷たい上空の空気が体を凍えさせていく。
幻獣界へいくにはここからしか行けないのだ。
「うっ…ぷっ…!」
空気が薄いためか、息をするにも辛い。
薄い雲を抜ければ、広大な森林、滝や川が見渡せる。
ピュウッと指笛を鳴らせば、突風が遥を浮き上がらせた。