妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
ぐしゃっ。
「べぶっ!」
「わぷっ!」
玄武は誰かの足で踏み付けられて撃沈。
遥はその足の持ち主に抱き留められた。
「朱雀。主人を放り投げるなんて乱暴なことは、わたしは許しませんよ?」
縁無し眼鏡をかけ、長い栗色の髪を三編みにした、20代後半辺りの青年が苦笑しながら言うと、朱雀はニヘラと笑いながら頭をかいた。
「遥様、大丈夫ですか?」
「ありがと六合。つか、その『様』付けやめてくんないか? 慣れないよ」
ほとほと困りながら言うと、六合は優しく微笑みながら言う。
「貴女は、わたしにとって女神同然です。これくらいは当然ですよ?」
妙に激甘マックスな六合に、遥は苦笑しながら腕から離れた。
ひょこっと顔を出すように、遥は六合の後ろに座っている二人の夫婦に挨拶する。
「久しぶり蒼龍に貴人。相変わらず仲良いな」
そこには、真っ青な長い髪を簪などで結い上げ、無愛想な顔をした40代前半の男性。
その隣には、美しい絵柄の扇子を口元を隠すように広げた、金の髪と青い瞳を持つ貴婦人が座っていた。