妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>


 ローファーを履き、玄関先に置いてある自転車に跨がる。

「行ってくる」

「気をつけての」

 ひらひらと手を振りながら見送り、見えなくなったと同時に、はっとする。

「しもぅた。今日は夜にあやつが来るということを言うの忘れとったわい」

 だが、まあいいかと思い、家の中へ入って行った。


 住宅地を抜け、河川敷の道路を走っていくと、見馴れた後ろ姿が目に入る。

「おーい! 緋音~!」

 腰まで伸ばした栗色の髪を靡かせながら後ろを振り向くと、緋音と呼ばれた少女は挨拶する。

「おはよ遥。後ろ乗せてって」

「いいけど、太ってないよな?」

「お姉ちゃん達の餌食になりたいの?」

 ギロリと睨みながら言うと、遥は真っ青になりながら謝りだした。

「スイマセンスイマセン! お乗りくださいませっ!」

「うむ。よきにはからえ」

 威張りながら言うと、二人は笑い出し、緋音は後ろに乗って出発した。

 他愛ない話をしながら駅前を通り過ぎ、5分もしない所に学校はあった。
 校門の前には入学式の立て札も立っている。

 そして早速。

「くぉらそこの2ケツ! 止まらんかあ!」

 いつもの交番のお巡りさんに注意されながら追いかけられていた。

 遥は必死で漕いでいると、緋音が指を一降り。

「うおわたあっ!?」

 お巡りの自転車の前輪が突如外れ、景気よく転げた。

 
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