妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>



遥はお茶を飲みほし、雰囲気の悪い空気を砕くように龍二と維鳴に言った。

「朱眼狼は甦ったばかりで力は未知数だけど、俺達の力が敵うかどうかがわからない。だから俺は残りの神獣を手に入れて、霊力を高めようと思ってる」

「ちょっと待ってくれ! 力の弱い今だからこそ踏み込むべきだ! そんな悠長な時間なんかない、っ!?」

 維鳴は言葉を詰まらせた。なぜなら、首筋に冷やりとしたまとわりつく何かを感じたからだ。
 視線を横に移せば、そこには騰蛇が静かに佇んでいた。


「遥の言うことには従ってもらうぞ。それが俺達神獣の、お前に対する協力の条件だ」

「騰蛇。そんな怖がらすなよ。お前ただでさえ怖いんだから」

 騰蛇は小さな息を吐きながら、維鳴のもとから離れていった。

 維鳴はやっと息ができるようになったような息を吐き、かいたことのないような冷たい汗を流した。

(あれが『血濡れの神獣 騰蛇』。この僕がこんなにあっさりと後ろを取られるとは…)

 眼鏡を整えながら去っていく騰蛇を見つめ、息を整えた。

「そういうことだ。妖狐の長よ。我等の力を欲しているのならば、この条件が呑めねばならんが?」

 蒼龍が眉間に皺を寄せながら維鳴を睨むと、身形を整えながら頷いた。


「いいでしょう。その条件を呑ませていただきます」

 維鳴は目に力を込めながら答えを返した。

「俺も、それに乗っかからないといけねえっつーことか」

 しぶしぶその話にのるような答えを出し、龍二は頭をポリポリと掻いた。

「桐裕家の三男坊よ。木偶の坊ながらによく理解したな?」

 蒼龍にまで言われ、龍二は眉を引くつかせたが、それを何も言わず飲み干した。


 


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