妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
遥は少し悩んだ。
朱眼狼の他に、何か得体のしれない何かがうごめいているのではないかと。
マナのカードの意味が、これからどういう事態を招くかはわからない。
だがそこで戸惑ってもいられない。
マナの忠告を胸にしまい込み、遥は今自分がすべきことに集中することにした。
夜空の星が、山の小さな川に反射して輝いている上を、フードを被った二人の影が飛び越える。
小川の向こう岸には、一人の女が佇んでいた。
影の二人は女の前に行き、小さな封のかかった壺を渡した。
「お帰りなさいませ長よ。そして弟君。準備は滞りなく」
受け取った壺を大事そうに持ちながら一礼すると、二人は洞窟の奥へと進んだ。
「月夜見。妖狐が本堂に接触した」
「はい。存じております。星は嘘をつきませんので…」
長は鼻で笑い、儀式の祭壇の前に立った。
「ようやく人間共に、己が犯した罪を解らせる時が来たな」
笑い声だけが洞窟を支配していく。
そんな長を、二人は見つめていた。