妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
戸棚からサキイカを出し、それを肴に酒を飲み交わした。
「で、なにしにきたんじゃ?」
「少し、この子のことが気になってな?」
「遥のことがか?」
徳利を差し出し、清明の盃にチビチビ注いだ。
「俺が残してきた仕事を、年端もいかぬ娘にさそうなどとした俺が間違っていたのかと。この重圧に耐えきれる娘であると、過信しすぎたのではないのか、とな?」
言い終えた後、清明はまた月を見上げた。
そんな清明を、玄武は鼻で笑った。
「遥は、おんしが思っておるほど子供ではない。芯のしっかりしとる、心の優しい子じゃ。おんしと違って、素直じゃしの?」
そう言いながらクイッと飲むと、清明は目を閉じながら口の端を上げる。
静かな夜に、二人は酒を飲み交わすという安らぎを、このひと時、それをも酒の肴として、その時間を過ごした。
(星は繋がり、そして、未来へと進んでいく。この娘の選択と妖狐の星は、一体どういうものになるんだろうか?)
その日の早朝。
龍二があくびをしながら下に下りると、いつもなら朝食を作っている遥が台所にいるはずなのに、なぜかいなかった。
「あれ? あいつまだ起きてねえのか?」
ひと通り準備した後、龍二はまだ起きてきていない遥を起こしに向かった。
「おーい? そろそろ起きねえと遅刻すんぞ~」
ドアをノックしながら言うと、向こうからは小さな弱弱しい声が返ってきた。