妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>



 戸棚からサキイカを出し、それを肴に酒を飲み交わした。

「で、なにしにきたんじゃ?」

「少し、この子のことが気になってな?」

「遥のことがか?」

 徳利を差し出し、清明の盃にチビチビ注いだ。

「俺が残してきた仕事を、年端もいかぬ娘にさそうなどとした俺が間違っていたのかと。この重圧に耐えきれる娘であると、過信しすぎたのではないのか、とな?」

 言い終えた後、清明はまた月を見上げた。

 そんな清明を、玄武は鼻で笑った。

「遥は、おんしが思っておるほど子供ではない。芯のしっかりしとる、心の優しい子じゃ。おんしと違って、素直じゃしの?」

そう言いながらクイッと飲むと、清明は目を閉じながら口の端を上げる。

 静かな夜に、二人は酒を飲み交わすという安らぎを、このひと時、それをも酒の肴として、その時間を過ごした。

(星は繋がり、そして、未来へと進んでいく。この娘の選択と妖狐の星は、一体どういうものになるんだろうか?)










 その日の早朝。

 龍二があくびをしながら下に下りると、いつもなら朝食を作っている遥が台所にいるはずなのに、なぜかいなかった。

「あれ? あいつまだ起きてねえのか?」

 ひと通り準備した後、龍二はまだ起きてきていない遥を起こしに向かった。

「おーい? そろそろ起きねえと遅刻すんぞ~」

 ドアをノックしながら言うと、向こうからは小さな弱弱しい声が返ってきた。





 

 




< 66 / 83 >

この作品をシェア

pagetop