妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>

 そんなことを考えながら、遥は体育館の中へと入って行った。

 祠の小さな異変に気付かずに…。



 体育館の中に設置されているイスに座り、退屈で長々と、そして淡々と続いていく来賓や校長の祝辞を聞いている。

 生徒会長の話になると、遥はあっ、とした顔になった。
 今朝自転車置き場の整備をしていた、あの三年の男子生徒だったからだ。

(後でねってのは、このことだったのか…)

 偶然視線が合い、微笑まれてドキリとする。
 男相手に何してんだろうというくらい、なぜか魅せられてしまうほど。

(モデル並…それ以上の効果アリだな…)


「おい本堂。あの生徒会長、校内ファンクラブがあるんだってよ。男女関係なくらしいぜ」

 コソっと隣にいた友人の藤井が言うと、遥は納得したように頷いた。

「そりゃ納得いくわ。歳の割に大人の魅力っつーのがあるっていうか」

「俺的にはお前のほうがカッコイイと思うけど? それよか、お前のファンクラブも早々にできたって聞いたぞ」

「…は?」

 一瞬間を置いてマヌケな声を出すと、藤井は笑いながら言う。

「御子柴の膨れっ面が目に浮かぶぜ」

 その言葉を聞き、渇いた笑みを見せる遥。
 だが藤井の思惑とは反対に、遥の笑みの意味は違った。

(緋音は彼女でもなんでもないんだけどな)

 心境はそんな感じだった。

 
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