失恋畑
冬の章
冬になると、
うつむいて歩きたくなるけれど、

冬になると、
街の灯が恋しくなるけれど、


冬になると、
明日明日と呟くけれど、


冬になると、
あたしは、
携帯電話のアドレスを、
変えてみたくなる。

大きな犬を飼おうかとか、

だぶだぶのセーターを、
編んでみようかとか、


あたしは一杯考えた。

流れてしまった君への想いを
補充せず、

他の何かで、

満たしたくて、

明日明日と呟いた。


寒いと痛いは似ている。

そんな気がして、

手袋をはずす。


冷たい空気。

凍える指。

そのうち痛みも薄らいで、

何も感じられなくなった。



心も、
そうなればいいのに。


極寒のなかにさらされた、

指先のように。


凍えて、
麻痺して、
そうなればいいのに。


あたしの心。


冬はあたしを、
少し救った。


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