★時の架け橋★ ー誠の背中に恋をした。
そう、美鈴にそっと心の奥で呟いてから、土方は胡座を解いて立ち上がり摺り足で何も言わずに広間をあとにした。





そしてその足は今日の報告で更に活気に満ちた騒がしい道場に向かう。






鈍っちゃいけねぇ、肝心な時に鍛錬が実を結ぶ。





その肝心な時が今日だ。





副長という格という事で仕事は殆ど机に向かうモノばかり、巡察などには滅多に参加しない。





一度総司が率いてる隊に同行した事があるものの、土方という存在が皆に緊張をつくらせる様で本来の力を出せなかった事があり、それ以降同行するのを控えている。






そんな生活をしてると刀を鈍ってしまうに決まってる。





そうならないように稽古によく向かう。






足を一歩踏み出す程に隊士達のじゃれあう様なはしゃぎ声が聞こえる。





その声で稽古をしているのが原田と永倉と藤堂の誰かだという事が分かる。





総司や山南さんは隊士の悲鳴が。






斎藤や井上さんだったら真面目な声。





そして原田と永倉と藤堂の三人は隊士達の楽しそうなはしゃぎ声が聞こえる。





……という様に都合よく分別されてるのだ。






これらの事をふまえて、






この楽しそうな声を聞く限り、道場で隊士達に稽古をしているのは原田と永倉と藤堂の三人の誰かだろうというのが土方の考えだ。





土方が道場に近付くにつれて皆の声がより鮮明に聞こえてくる。






どうやら土方の推理は当たったらしい。






永倉と藤堂のドデカイ盛大な笑い声が他の隊士の笑い声のなか浮いて聞こえた。
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