御劔 光の風2
少しずつ近寄ってくる貴未は見れば見るほど痛々しい。

怪我はないのかと思わず聞かずにはいられなかった。

「怪我はないよ。川に落ちたり、地割れに巻き込まれたりした人たちを助けてただけさ。大丈夫。」

いつものように笑顔を振りまきながらカルサの傍に近寄る。

足を引きずったり、無意識に傷をかばう様子もない。

どうやら本当に貴未に付いた血は彼のものではないらしい。

一先ず安心はしたものの心中は複雑だった。

彼の服が汚れているだけ被害者がいるという事だ。

「そろそろ俺の力が恋しい頃かと思って来たけど。」

「察しがいいな。」

感情を出さない顔で頬杖つくとカルサはよく通る声で短く答えた。

さすがの貴未も苦笑いで視線を地図にずらす。

いくつもつけられた印、自分が見た分よりも少ないように思える。

「ナータックさん、借りるよ?」

ナータックの手からすっと筆を取り、貴未は地図に印を付け加えていく。

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