御劔 光の風2
「それでは貴方もカルサも…誰も幸せにはなれない。」

「ナル。」

「あの子はそれを望まないわ、サルス!」

勢いで掴んだサルスの腕をナルは強く揺らした。

その手が震えていることに気付いたのはサルスだけだろう。

強い物言いで気丈に振る舞っているが、ナルも混乱しているのだ。

そして思い知らされる。

もうここに頼れる者はいない、カルサとなった自分が全ての標となり道を造っていく。

それは国の方向も、誰かの逃げ道も同じことだろう。

捨てたものは二度と返ってはこない。

造るも捨てるも全て自分の判断で決まってしまうのだ、そこにカルサはずっと一人でいた。

秘書官という立場で傍にいてもそれだけは支えることが出来なかった部分だったのだと思い知らされる。

こんな時に、こんな時だからこそ知れてよかったのかもしれない。

きっとナルのいう望みはカルサだけではない、何よりナルの望みなのだということもこの立場ならよく分かるのだ。

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