御劔　光の風２
あの町にどんな歴史があるのか千羅はなにも知らない。

「でも今は…穏やかな場所だ。」

千羅の表情はとても優しく、そしてとても切ない。

瑛琳はかける言葉が見つからず黙って彼を見つめることしかできなかった。

「こんな町にあいつを住まわせてやりたいよ。自由に両手広げて生きれるような場所に。」

それが誰の事を指しているのか瑛琳にはすぐに分かった。

戦いとは無縁の世界で、ただがむしゃらに一度きりの人生を悔いなく楽しく生きる。

そんな人生を歩ませてやりたい人がいる。

何者にも追われず、何者にも責められない、豊かで平和で穏やかな暮らし。

望む事は誰でも自由な筈なのに。

「理不尽だよな、本当。」

風が切ない声を余計に悲しくさせた。

「こんなにも強く望んでいるのに、どうして叶わないんだ？おかしいだろ。」

気持ちの高ぶりからおもわず声を張り上げた。

封印された仲間を目の当たりにして動揺したものの、すぐに封印を解く鍵を見付けることに使命感を持った瑛琳。

そんな立派な彼女とは違う。

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