私と彼が嘘をつく理由

しばらくして
私の手からするりと
忍の手が抜けた。

そして、ふわりと抱きしめられた。

「どうしたの・・・?」

耳元で鼻をすする音がして
小さな嗚咽も聞こえた。

さっきは気づかなかったけど、
忍が泣いたところを見るのは
初めてな気がする。

「泣かないで・・・」

私は腕を忍の背中にまわして
あやす様にポンポンと叩いた。

落ち着くまで
ずっとそうしていた。


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