私と彼が嘘をつく理由
遠い存在
「ごめんね。」
口を開いたのは忍だった。
身体を離して
まっすぐと私の目を見た。
「俺のせいで怪我して傷付けられて。辛かったよな・・・。」
「違うよ・・・」
私はお兄ちゃんが
そんな顔をしてる方が辛いんだよ、
お兄ちゃんがいてくれれば
乗り越えられるんだよ、
そう伝えたかった。
でも、それを忍がさせなかった。
聞きたくないと言うように
私の口を手で押さえた。