私と彼が嘘をつく理由
私は前を向き直って
ご飯を食べ始める。
隣にいた忍は食べ終わった
食器を重ね、流しへ運んでいた。
チラッと忍の方を見ると
母と楽しそうに笑い合っていて
胸がぎゅーっと締め付けられた。
今にも出そうな涙を堪え
味噌汁をごくんと飲み込む。
「じゃあ、行ってきます。」
忍はそう母に声をかけると
私の背後を通る瞬間に
私の頭をポンッと叩き、
「ため息吐くと幸せ逃げるよ」
と言ってリビングから出ていった。