私と彼が嘘をつく理由

「それは出来ないんだ。」

その言葉を聞いた瞬間
手が止まった。

ただ、すっと忍から離れて
真っ直ぐ忍を見た。

すると、困った顔をした
忍と目が合って。
ふと我に返った。

「…冗談。困らせてごめんね?」

手で涙を拭うと、全力で笑った。

「じゃあ、私戻るね?私は、全然平気だから!お幸せに」

それだけ言い残し、
屋上を出る。
なにか忍が言っていたけど
振り返らず、ただ歩いた。


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