叶多とあたし
「ほら、日芽にはまだ早いよ」
お兄ちゃんは笑いながら言った。
それから少しして、静かに西の方を見て、
「もう、こんな時間か…」
西に傾いた赤い太陽は、世界の全てを赤く染めているようだ。
私も、お兄ちゃんも。
しばらくお兄ちゃんは赤い太陽を見つめてから、私に手を差し出してきた。
『帰ろう』の合図だ。
「うん」
私は、その手を強く握った。
お兄ちゃんの手は暖かい。
お兄ちゃんは何でもできて、カッコよくて、優しくて。
私の自慢のお兄ちゃん。
「お兄ちゃん、またここ来て遊ぼうね〜」
「ああ、そうだな」
「お兄ちゃん………」
「……ん?何、日芽」
「だいすき!」
お兄ちゃんはまた、笑った。そして、私の頭を撫でた。
「知ってる。俺も、日芽が大好きだよ
…いいか、もしいじめられたりしたらすぐ俺に言えよ。
日芽を傷つける奴がいたらボコボコにしてやるからな!!
俺が守ってやるから、安心しろ」
「うん?…わかった!」
お兄ちゃんの優しい手が大好き。
お兄ちゃんの笑った顔が大好き。
お兄ちゃんが、
世界で一番、大好き!