叶多とあたし


やっと夕飯ができて、日芽の機嫌は直るはずだった。



あれほど待ちどうしにしていた夕飯に手を付けず、日芽は不機嫌オーラを全開に出して黙っている。



原因は日芽の左隣りにあった。



そこには日芽の兄である叶多が座っているのだ。




その隣では友人3人が、日芽の機嫌を気にすることもなく騒いでいる。



彼哉だけが日芽の機嫌を気にしていた。




「彼哉・・・・・」



「はいっ・・・!」



日芽の腹の底から出したような声に恐怖を覚えた。

いつもの高い声からでは考えられないほど低い・・・。




こえぇ〜・・・。




「なんで、こいつがここで夕飯食べてんの!?私がここに来た意味ないでしょ!!」



日芽は自分の兄をフォークで指す。



そんな日芽に、彼哉ではなく、叶多が答えた。


「彼哉が夕飯誘ったんだよ」



「なっ!?何正直に言ってんの!??俺が誘ったことは日芽には内緒だって言っただろ?!」


あれだけ言ったのに!!裏切ったなぁー!!!


それに空気読めよ、叶多。



「叶多、あんたには聞いてない!


ってか、どういうこと、彼哉!!」



「いや・・えっとねぇ?・・・だから、そういう・・・・こと」




「ちょっといい?」



3人に剣幕な雰囲気がたたずむ中、友人3人の中一人、エリコが口を挿んだ。

卒業式のとき、涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた美人だ。



「遊園地のタダ券あるんだけど、明日みんなで行かない?」


そして、いきなり関係ない話をもってきた。



「そうだ。この話をするためにここに来たんだっけ」


「忘れてたぁ。あはは。ここにいる人全員強制参加ね!ちょうど6枚あるじゃん」




ちゃんと用事があったのね・・・。




「いや、俺はもう大人だし・・・」


さりげなく帰ろうとする叶多。


「だーめ!叶多さんも行かなきゃね」



エリコに腕をがっしりとつかまれ、叶多はげんなりした。




日芽は心の中で「ざまぁ(笑)」と思ったのだった。



「ちなみに、もう6人の名前で予約したから 」




・・・・いつに間に・・・・・・・。








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