叶多とあたし



「ねんね、なののママはどこ?」



急に、女の子に裾を引っ張られた。




「…なのちゃんっていうの?ママはねぇ………‥‥」




どこ…?




「叶多!!なのちゃんのママはどこ!?」





「知らねぇよ。それをこれから探すんだろ?」





そっか。………ん?





「……は?探すの!?何で私たちが!」



私は叫んだ。




そうよ。


迷子センターにでも預ければいいのに!!




その問いに叶多は呆れた様子で答えた。

「……日芽、俺と仲良く閉園時間まで遊園地で遊ぶか、この子の母親探して時間を潰すのどっちがいい??」






「!!???誰があんたと仲良く遊ぶかってのよ!!


あぁ」







なるほどね。






「なのちゃん、ママは何色の服着てた?」




私は、なのちゃんの背の高さに合わせるようにかがんで問いた。





「お馬しゃん…」





「え」





「お馬しゃ―ん!!!」





えぇ!?





「ちょっと、待ってよ〜!!」




彼女が『お馬しゃ―ん』と叫んで走った先にあったのは、メリーゴーランドなのだった。






ママ…じゃないよねぇ!!??





「なのちゃん、ママはここにいるの?」



そう言って、メリーゴーランドの周りを見渡してみたが、それらしい人はいない。




「乗る!!」




は!?




何言っちゃってるの!?






「あのね、なのちゃん。ママを探すんでしょ?」





「これ乗る!!」




えぇ゙……。





「いいじゃん、乗らせてやれば」





……叶多…………。







じゃあ、あんたが一緒に…





「俺は乗らないけどな」






!?







「さっき、お前のために塩ソフトを食べてやっただろ?」




叶多は右の口角だけあげて笑みを浮かべた。






……こ、ここでそれを出してくるな―――!!!!





心の声を表す表情を浮かべると、叶多の方はいかにも楽しそうに笑った。






…楽しそうでなによりである。






………私はちっともたのしくないが。






でも、いつもならもっと怒るところを今日はそこまで腹が立たなかった。





理由は分かっている。






叶多は、私をからかった拍子に出てしまったらしいから気づいてないみたいだが、彼は確かに言った。






―お前のために食べてやった―
って。








ふぅん。





そうなんだぁ。







悪い気はしない。









しょうがないから、メリーゴーランドは私が乗ってあげようと思う。




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