叶多とあたし




「お兄ちゃん!!見て見て!!」




私は、誕生日プレゼントに買ってもらったシンデレラの水色のドレスを着て、くるりと回ってみせた。





足にはもちろん、ガラスの靴に見立てたプラスチックの靴である。






「おぉ!やっぱり、日芽は似合うな。本物のお姫様みたいだよ」






「ほんとう?やった!!」





くるりと回って、今度はお辞儀をした。







「日芽ねぇ、いつか王子様が迎えに来たら、お姫様になるの!」






「そっか。でも、そしたら俺寂しくなるなぁ」





「大丈夫だよ!!日芽、お姫様のお友達作ってお兄ちゃんと結婚するように言ってあげる!!そしたら、お兄ちゃんは王子様だね!!」






本気で夢の世界を語る私を、叶多は笑った。





でも、温かく。





「お兄ちゃん、寂しくなくなるよ!」





「……うん。楽しみにしてる」





って、幼い私の頭をぐしゃぐしゃにかき撫でた。







思い出の中の叶多は、温かい。





表情なんて今と全然変わってないのに。



ほとんど無表情で、笑ったなんて表現しても口角が少しだけ上がるだけで。





言葉は優しいのに口調はなぜかいつも人を小バカにしたみたいだし、面倒くさがってるっぽいときもあるし。











でも、大好き『だった』。










―懐かしい…―





その表現が正しいのかどうかも分からないほど、





大好きだった叶多との思い出は別の世界のことに思えたー……。






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