叶多とあたし
私、遊馬日芽(あすまひめ)は今日中学を卒業します。
「ひ〜めぇ〜」
友達達が涙で濡れた顔でくっいてきた。
ちょ…、その顔で来ないで……。
「なんでぇ、違う高校に行っちゃうんだよぉ!!」
中でも一番ひどい顔になっているエリコが言った。
普段は美人なのに…
鏡、貸そうか?
私の心の声とは裏腹に、みんなは本気で悲しんでくれているようだ。
心が暖かくなって、ありがとう、って呟いた。
この中で私だけが違う私立高校に通う。
私だって別れは悲しいけど、みんなはその倍は悲しんでくれてる。
幸せだなぁって思った。
「大袈裟だなぁ。今生の別れじゃないんだから〜」
「だぁってぇ。もう間見(はざみ)君に会えないしぃ〜!毎日の目の保養だったのにさぁ〜」
そしてその他の友達達も頷く。
………………。
そっちが本音か!!!
私、友情に感動しちゃったじゃん。
『間見君』とは、間見彼哉 (はざみかなや)のこと。
私の幼馴染みだ。
みんなは私が私立高校に行くから彼哉も同じところに行くんだって言ってるけど、別にそういうわけじゃないんじゃないかな~。
「まぁ、春休み中も遊ぼうよ。もう高校入学の準備とかほぼ出来てるし・・・・」
「そだね。じゃあ、・・・・ばいばい」
「ばいばい」
準備ができているとしても春休みは短いし、きっと忙しくなる。遊ぶ時間がないことはお互いが分かっていた。しかし別れは名残惜しく、また近くに会いたいと思ってしまう。
私は校門に向かいながら、次に会うのはいつだろうかと考えた。