叶多とあたし
『…遊馬日芽ちゃんだよね……?』
校門から少し歩いた最初の曲がり角のところで声をかけられた。
声をかけた相手は、男子高校生とおぼしき人。
学ランを着ているが、全開に開けた前から見えるのは柄Tである。
どちらかと言えば坊主に近い短髪が、彼をより、“チンピラ”に見せていた。
と、彼の後ろにもう二人。
二人とも、服装は短髪男と同じだ。強いて言えば、柄Tの柄が違う。
一人は、丸刈り。もう一人は、肩までのロン毛という対照的な髪型だった。
「俺たちね、叶多の友達なんだ」
短髪男が言った。
彼は、笑うと優しいそうであった。
それに、叶多には負けるが、イケメンだ。
優しそうな短髪男の笑顔を見て安心する。
「来月、叶多の誕生日だよね」
「え…まぁ…」
「そこでね、俺たち叶多にプレゼント渡したいんだけどさ…叶多、何が欲しいのか分からなくてねぇ…?」
「男同士だし、誕プレ聞くのとかハズいじゃん?そこで日芽ちゃんなら叶多の欲しい物わかるかなぁって思ったんよ!よかったら俺らと一緒に叶多の誕プレ選んでくれない?」
ロン毛が割って入ってきた。
ロン毛のチャラい喋り方に不安を覚える。
チャラく聞こえるのは見た目のせいもあるのかもしれない。
ふと、小さい頃によく大人に言い聞かされた言葉が浮かんだ。
『知らない人についていっちゃだめだよ』
そうだ。
ついて行っちゃだめだ。
本当に叶多の友達かどうかもわからないんだし…。
この時のあたしの判断は正しかったと思う。
彼らについて行かないと決めたその判断は、とても利口だった。
しかし、彼らの方が一枚上手だったのだ。
嘘は真実を混ぜると本当のように聞こえるとは、本当だ。