叶多とあたし
そっか。この人も人間なんだ…。
当たり前のことを実感した。
そう思ったらこんな状況に置かされながらも彼らの気持ちに共感する自分がいた。
あたしがどんな顔をしていたのかは自分ではわからない。
ただ、
「その顔やだね。…………むかつく」
そんなことを言われてもなぜか怒りや恐怖は浮かばなかった。
「………なんで俺らの作戦が流れてたのかわかる……?」
その質問はワザとだ。
ここまでの話の流れでなんとなくわかる。
「……叶多が洩らしたの…?」
かすれる声で、滲む目でそう聞くと短髪男は口角を上げた。
「惜しい。正確には、叶多が洩らしたんじゃあない。洩らされたんだよ。田河に」
「……っいたっ」
急に頬を強く抓られた。離された指の痕が赤く残る。