叶多とあたし
短髪男は楽しそうに笑った。
「そうだね。痛いよね」
そう言って目を細める。
「叶多さ、野球初心者じゃん?だからそこを上手く突かれたっていうか…田河がさ、叶多に上手くのしかかったんだよ。ラッキーなことに叶多とは幼なじみだし?警戒されることなく、どことなく作戦聞いたんだろうね。聞けるセーフラインぎりっぎりまで。ホントにさり気なく。………叶多は初心者だから…どこまでがセーフなのか分からないし。田河、あいつはホント上手いよ。卑怯な手を使う天才だよ。これまでに何十チームが田河の卑怯な手でやられてきたか……」
「じゃあ、叶多のせいじゃないじゃない」
密かに安堵の息をついて呟く。
しかし、それに返ってきたのは予想外の答えだった。
「いいや?結果論、叶多のせいだよ」
「……え?」
「あはは。何でって顔してるね。それはね、」
短髪男の顔が間近に迫ってきて、思わず息を止めてしまった。
自分が息をしていないことに気付いてそれからはぁ、と息を吐き出す。