叶多とあたし
「田河が不正をしたってことで田河の学校の顧問に言ったら田河を退場にするって方向で話が進んだのに、叶多ってば田河を庇うんだもん。俺らは何にも言えないじゃん…」
ははっ…っと渇いた笑いを漏らす。
「顧問も納得しちゃうし。田河はすっげー笑顔だったし。………マジありえねぇー……」
語尾が掠れていた。
そう言って、短髪男は下唇を咬むと下唇が赤く滲んだ。
見ていて意志もなく顔が歪む。
彼の姿は見ていて痛々しかった。
でも。
それでも…。
「叶多は悪くないっ!」
睨みを利かせると小さく舌打ちが聞こえる。
「…うるせーよ。黙れ。もう、お喋りの時間はおしまいだ」
「…やっ」
前髪を引っ張られる。
目の前で笑う短髪男には、さっきまでの優しい笑顔は残っていなかった。