叶多とあたし
逆襲
「………ん…」
ゆっくりと視界が開ける。
と同時に、手首と足首に痛みが走った。
「ったぁ…!」
何事かと痛みの方へ視線を向けると二つずつ、縄で縛られていた。
綱引きで使うような縄だ。
太さはその三分の一ぐらいであるが。
ぞくりと胸が冷えた。
この感覚、覚えてる…。
ていうか、忘れるはずがない。
嫌な予感に顔を歪ませると、奥の扉が開いた。
顔を覗かせたのは二人の男。
この顔も忘れるわけない。
今は短髪でなくなったが、あの日の短髪男だ。
そして、隣に並ぶのは今も健在のロン毛にチャラいオーラを纏った“チャラ男”である。
あれ…。
丸刈りは…?
そう聞けるほどの心の余裕はなかった。
あとに残るは、先の不安だけだ。
「思い出してくれた…?」
ニヒルな笑いは今も変わらない。