叶多とあたし




シャキン。


金属と金属の掠れる音が聞こえた。


あたしにとっては恐怖を思い出させる音。



とっさに髪を庇おうと手をのばしたが、それは手首を縛る縄で遮られた。



だから、出来るだけ男から髪を遠ざけようと必死でもがいた。



その様子が愉快だったらしく、またクスクス笑い出す。




「大丈夫。心配しないで?髪は切らないよ。切るのは…」





ジャキン。




「こっち!」





一瞬、何が起こったのか分からなかった。





少しずつ状況を理解して…。



見れば、Tシャツの前を切られ胸元は全開だった。




「……やっ……!」




羞恥で身体が熱くなっていくのがわかる。




目から涙もこぼれ出た。





「…やだ…やだやだやだ……」




「んー?何か言った?」




男の手があたしに忍び寄る。


















そのとき。






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