叶多とあたし

大好き




叶多は右の口角だけを上げてにやりと笑った。




「お兄ちゃん?」




彼は私の呟きを繰り返して言った。




しまったと思った。





私はあの日、叶多を『お兄ちゃん』などと二度と呼ばないと誓ったのだ。





もちろん、叶多にも宣言した。だからこいつは私の失態を喜んでいる。





私が『お兄ちゃん』と呼んでしまったから。







「なんで帰ってくんの。叶多。あっちで一生幸せに暮らせばいいじゃん!!」




今度は間違えないように強調して言ってやった。







それでも叶多は表情を変えずに



にやりと笑ったまま言う。


「ここは俺の家だ。帰って来てなにが悪い。なんならお前が出て行くか?」







昔からそうだ。何をするにも顔色変えず、飄々とこなして…………ムカつく。




何も言い返せないのが悔しい。






いっそのこと家出しようか。





かわいい妹が家出しようもんならさすがの冷血兄も顔色変えて止めるはず…。





そうだ。





「いいわ。こんな家、出ていって末永く幸せにくらしてやるわ!!」






言ってやった!!





どうだという顔で叶多を見る。





きっと青ざめているだろうと思った。










が。






叶多は肩を震わせて笑いを堪えている。




!?




「お幸せに」




叶多はそう一言言っただけだった。









な――――――!!!?






ムカつく!!!!!








絶対、出ていってやる。





今すぐに!!





泣いてすがってきても帰ってやんないからっ!!!











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