あの子の隣に座るコツ!
窓際の床、アリサの隣にストンと腰を下ろす。


季節は7月。茹だるような暑さだった今日も、深夜1時となればさすがに過ごしやすい。



昼間はあれほど耳障りだったセミの鳴き声も、今はそこまで不快じゃない。アレは暑さとの相乗効果で鬱陶しかったんだな。



「1階の騒ぎが収まれば、啓一から連絡が入る。それまでの我慢だな」



完全な静寂よりはいくらかマシだ。ろくでもない返事が帰ってくる事を予測しながらも、声をかける。



「いつまでアンタと2人でいなきゃなんないのかしら…」


案の定。



「くじ運の無さを恨むんだな」


「ええ、それからアンタがこの世に生を受けたことも恨むわ」



またまた案の定。
まァ、いいんだけどさ。
本気でそんなこと思ってたら
くじでペアが決まった時にミッションなんか辞退してるはずだしな。



「お前、今日ヘンじゃなかった?」


「あんたの方がヘンよ。変態だわ」



「…話が進まないからスルーするけど、妙に無口だったり、饒舌だったり…」



ツンデレだったり。



「ぶぁっ!!?」


隣で座っていたアリサの裏拳が、俺の顔面にヒット。


「次言ったら殺すわよ」


「心の声読むなって…」



鼻を押さえる俺の横顔を見て、アリサがぷっと吹き出した。


「…言っとくが、笑える要素なんてどこにもないぞ」


「別に。ただ…確かにそうね。最近ちょっと良いことがあって、情緒が安定してないの」



なんだそりゃ。



「安心してよ。あんたに対する敵意と悪意は、ごく安定して持ち合わせているわ」


「こっちは少しも嬉しくないね」


「なによ。ムカつくわね。死になさいよ」



こんな脈絡ない会話を、俺たちはいつまで続けるんだろうな。


この時間の話じゃないぜ。
これからの話だ。
俺とアリサはずっと、3年に上がっても、卒業しても、ずっとこんなスタンスなのかな?
別にいいけど。



「お前さァ…」


「何よ」



「なんで俺のコト嫌いなの?」


「嫌いなモンはしょうがないじゃない。目が合った瞬間に口を突いて出ちゃうのよ。“死ね”って。それって、嫌いってことでしょ」


ちょっとした確信を持つ。


一生続きそうだな。
このスタンス。
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