あの子の隣に座るコツ!
ジャッキー・チェンは、すごいなァ。
それが、一番の感想だった。
俺とアリサの体は、一瞬だけ宙を浮き、
重力に捕まり、
真下に落下し、
駐輪場の布製の屋根の上でバウンドし、
また宙に浮き、
1回転して、
重力に捕まり、
花壇の植木に突っ込んだ。
…物凄い景色だった。
背中から植木に埋まったまま、ジェットコースターを遥かに超越する疾走感と落下感を振り返る。
そうだ、アリサは…?
「う…アリサ、どこ?」
自由の利かない身体に鞭打って、辺りを見回す。
く、
暗くて分からん…。
そ、そうだ。
連絡。無線で。
「こ…こちら大吾。なんとか…脱出成功」
いや、成功か…コレ?
ザザザッ。
“大丈夫か!?今どこだ!”
この薄情な声は…ユウ先輩か。
「選択教室の裏の、植木です」
“すぐに行く!そこ動くなよ!”
ハイ。
了解。
動けませんから。
「大吾」
ものすごく至近距離で声がした。
アリサの声…あ。
目の前にいた。
アリサは俺の胸の中にすっぽり頭を埋めていた。落ちたままの状態なのかな。
お腹の辺りにちょっと…あー…やわい感触が…。
「ケガないか、アリサ」
「バカ」
震える声で、アリサが言った。
「マジで…怖かった…」
「泣くなよ、気持ちの悪い」
「泣いてない!」
ボロボロ涙流れてますよ。
「ケガないかって聞いてるだろ」
「無傷よ、アンタが血まみれになってるおかげでね…!」
え。
うわ、マジだ。
植木で切ったみたいだな。
二の腕ぱっくり。
半袖は失敗したかな。
「バカじゃないの、ホントに」
「いや…その、悪かったよ」
お前にそんな風に泣かれると困る。
どうしていいか分からん。