あの子の隣に座るコツ!
「…兄貴に」

「…はい?」



俺の胸に顔を埋めたまま、しばらくしゃくりあげていたアリサが、唐突に口を開いた。



「兄貴に似てるから、あんた」

「なにが。誰が。誰の」



「あんたが、あたしの兄貴に、似てるから」

「似てるから…何?」



そこまで言って思い出した。


“あたしが助かったらアンタが嫌いな理由でもなんでも教えるから!“最バカ”なんだからおとりにでもなんなさいよ!”



今、コレやってんのか?



「お前、兄貴いたのか」


そして、兄貴が嫌いなのか。


だから、兄貴に似てる俺が嫌いなのか。



「ちょっと違う」

「どう違うんだよ」



どうでもいいが、顔うずめたままで喋りにくくないか?



「嫌いな兄貴に似てるから嫌いなんじゃない。アンタが兄貴に似てるから嫌いなの」

「何言ってんの?バカが移っちまったのかな」


アリサが俺のぱっくり二の腕をつねった。思いきり。


「ぐぁっ!?いっでででで!!痛い痛い痛い!!」

「話してやってんだからちゃんと聞け」

「わ、分かった!痛いって!肉がはみ出る!!やめて!!」



ホントになんてヤツだ。
殺す気か!



「兄貴はあたしと3つ違いで、名前は翔太。ここの学校に通ってたの」



どうでもいいが、無傷ならどいて欲しいなァ…。



「イケメンで、勉強出来て、スポーツもそこそこだった。性格も良かったし」



「そりゃあ…よく似てるなァ、俺に」



再びぱっくり二の腕をつねられる。



「おぅっ!?痛い痛い痛い!!」

「一旦黙れ」

「わ、分かった!やめて!痛いって!!ゴメンって!!」


なんか血に混ざって白い汁みたいなモノも出てきたんですけど!



「あたしは小さいときから兄貴に可愛がってもらってた。大好きだった。兄貴が」

「そんなほぼ完璧な兄貴に俺のドコが似てるんだよ」

「分かんないわよ。とにかく似てるの。雰囲気とか」

雰囲気ねぇ。
それで?
そんな素敵な兄貴に似てる俺は、
流れ的に好かれるんじゃないのか?



「だから嫌いなの」

「は?」




「思い出すから」

「…え」



「今は、兄貴…いないから」

「……」



思わず口をつぐんだ。



あぁ。
そういうことなのか。
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