あの子の隣に座るコツ!
泉アリサの自慢の兄貴、
泉翔太。



顔もよくて。
勉強できて。
スポーツできて。
性格も良くて。




妹思いで。



そんな兄貴が、大好きだったアリサ。



アリサが俺を嫌うのは、そんな兄貴に、俺が似てるから。



俺を通して、兄貴が見えるから。



兄貴を思い出すから。
もう、いない兄貴を。


兄貴が、もういないことを、
思い出すから─?



「何か…悪い。変なこと聞いて」

「別に。あたしが勝手に言っただけだし」



もごもごと、呟くようにアリサが言った。



「…あたしは…兄貴にたまに会えるみたいで、ちょっと嬉しいし」

「…そうかい」



アリサの寂しさが、触れ合っている肌を通して、伝わって来た気がした。



何か、なんとかしてやりたい。


アリサは天敵だけど、クラスメイトだし、友達だ。なんとかしてやりたい。



「あー、アリサ?」

「…なによ」



「兄貴は、嬉しがってると思う。お前にそれだけ好かれて。兄貴は、多分お前に覚えてて欲しいと思ってるし、その…お前は辛いかもしれないけど、自分のこと思い出して欲しいと思ってると思う」

「そう、かな」



「うん。だから、たまには思い出せばいいと思う。俺を通して。それで辛くなったら俺を殴ればいい。蹴ればいい。相手してやる。俺は、ここにいるから」


アリサが顔を上げて、俺を見上げた。



「だから」


だから。


「だから、もう泣くな」

「…うん」



目をぐいっとこすって、アリサがコクリとうなずいた。



「…大吾」

「ん?」



「…ありがと」

「…ん」



やめろよ。

天敵だろうが、お前は。



「ユウ先輩来るまで…その…このままでいい?」

「あー…まァ…いいけど」


…まァ、アレだ。


仕方ない。


しばし休戦てヤツだな。
そんな顔されちゃなんも言えないよ、こっちは。




妹みたいな顔しやがって。
< 109 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop