あの子の隣に座るコツ!
午前2時15分。


正門からの下り坂を、足を引きずりながら降りる。


「いてて…痕になるなァ、この二の腕」


ぶつくさ文句を垂れる、帰り道。



ミッションは、ハプニングはあったものの、誰ひとり警備員に見つかることなく無事生還。



結果としては。
えー…
端的に言うなれば、こうだ。


惨敗。



あの後、ユウ先輩に助けられた俺たちは正門前でメンバーと合流。


そして、結果発表。



結局、俺とアリサとユウ先輩以外は、テスト作成者の机を見つけることすら叶わなかったようだ。



ユウ先輩は、机を見つけたはいいが、テスト問題を探している間にあの警備員の騒動が起きたらしい。



と、いうワケで。
実際にテスト問題暗奪までこぎつけたのは俺とアリサのふたり。
だった、はずなのだが。



俺のテスト問題も、
アリサのそれも、
正門前に集合した時点で、すでに紛失していた。


絶対あの時だ。
決死のダイブ。


落下の衝撃かなんかでポケットから落ちて、そのまま風にでも吹かれて飛んでいってしまったんだろうな。


アリサのヤツも、テスト問題を胸ポケットに入れていたらしいし。あんな常識はずれな勢いで落ちれば無くなっても不思議ではない。


つまり、
収穫はゼロ。


俺たちはただ校舎に潜入して、警備員に追い回されて、ただ逃げてきた。


それだけ。


“ま、いいんじゃないか?楽しかっただろ?”


そんな能天気なユウ先輩の一言で、ミッションはお開きとなったワケだが。



「こっちは大ケガだっつの」


ぱっくり割れてしまったのは、右の二の腕だけではなかった。

左のふくらはぎと、右の脇腹も、植木で切ったのか、これまた見事にぱっくり割れていた。


それから、多分捻挫してる。


右足。ひねったな、コレ。


まぁ…


「楽しかったから、いいけどサ」



結局最後は、メンバー全員笑って別れた。


そりゃそうか。


コレを面白くないなんて思うヤツがいるのかね?



最高じゃないか。



最高の笑い話。



やっぱり学生生活は、こうじゃないとな。



友達がいて、
先輩がいて、
後輩がいて、


例えばちょっと悲しい過去があっても、



みんながみんな笑ってて。


そんな空間、そうは見つからないよな。
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