あの子の隣に座るコツ!
「…あと」

「うん?」



何か言いたげな東條さん。こちらをちらちら見ながら、言葉を選んでいるように見えた。頬がうっすらピンクに染まり、ホント可愛い。



「…アリガトウ」



小さな唇が、そう動いたように見えた。


「…いや、全然。失敗したし」



不法侵入の上にテスト問題暗奪は全滅。警備員に見付かって窓から逃走。



あげく右の二の腕と脇腹、左足のふくらはぎをぱっくりと切り、右足は捻挫。アリサが無傷だったのがせめてもの救いか?



ケガはほとんど治ったけど(バカは治りが早いのだ)、結局なにも解決してない。



俺の空回りに終わったんだ。



「そんなの」



顔を上げた東條さんが、こっちを見た。



や、やめて!
恋に落ちる!



「そんなの、関係ない」

「そうなの?」



東條さんが、コクリとうなずいた。



「…日比野くん、優しいから。それが、嬉しい。だから、ありがとう」



文節を繋ぎ合わせただけのセリフだけど、


心に響いた。


東條さんを助けたいって気持ちが、伝わったみたいだ。


なんか、嬉しさが込み上げてきた。



あんなふざけたミッションでも、ちゃんと成果があった。



東條さんが、ちょっと心を開いてくれた。
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