あの子の隣に座るコツ!
1年δ(デルタ)組、波多野優紀(ハタノ・ユウキ)。愛称・ユウキちゃん。



「今日も楽しくまーじゃんまーじゃん…って、あっ!直紀くん?」



机で息絶えている直紀に駆け寄って2、3回ゆさゆさと肩を揺らすと、今度は頬を膨らませてこちらの雀卓のメンバーを睨んだ。



「ちょっと!また直紀くんカモったんですか!?」



高いところでまとめた黒髪をぴょこぴょこと揺らしながら、ユウキちゃんが雀卓に歩み寄る。



「メンツが足りなくてさ。ノーレートだ。金は賭けてないよ」



悪びれる風もなく、ユウ先輩が弁解した。



「直紀くんなんてまだ麻雀とドンジャラの区別もついてないんですよ!まだ弱いんです!役も覚えてないのに勝てるわけないじゃないですか!弱い人をカモって面白いんですか?あんまりいじめないで下さい!」



「ユ、ユウキ…なんか俺が胸痛い…」



「直紀くんは黙ってて。いくら直紀くんが麻雀すっごくすっごく弱いからって許せない!」



「ユウキ…、マジ、勘弁して…」



この子は天然なのかな。自分が一番直紀にダメージ与えてることに、気付いてないみたいだ。



「悪かったよ、波多野」



「全く心込もってません、ユウ先輩!」



「購買で買ったプリン余ってるんだが、いるか?」



「…えっ」



「いるか?」



「…いります」



「じゃあ許してくれ」



「許しますっ」



ガタンと大きな音を立てて、直紀が机から落ちた。



「オイ!ユウキ!」



さっきまで死んだ魚みたいになってたのに、大きな声が出るもんだな、直紀。



「何、直紀くん?」



「何、じゃねぇ!あれ!?俺はプリン以下の存在!?」



「そうね、直紀くんはプリン以上の幸せをくれたことないし」



「プリン以上の幸せって何!?甘さ!?人としての!?」



まるで夫婦ゲンカだ。いや、兄妹ゲンカかな?どっちにしろ聞いてて飽きないね。



「まぁまぁ。波多野、杉山に役とフリテンと捨て牌について教えてやってくれ」



「御意です」



「くそぉ、ユウキに教わるなんて屈辱だ…」



「文句言わないの」



直紀が座り直した机の隣に、ユウキちゃんも座る。



それを見て、さァ、こちらも試合再開。
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