あの子の隣に座るコツ!
「え!そうなの?明日?何時?」


なんか、驚いてるみたいだけど。



「もっと早く言ってよ。明日お父さんとお母さん、いないって。え?うん、そう。外食。…行かないわよ、邪魔しちゃ悪いし。とにかく明日なのね?分かった、あたしは早く帰っとく。うん、じゃ、気を付けてね。はぁい」



そう言って、アリサは電話を切った。


幸せそうにディスプレイを見詰めるアリサ。


うーん、お前もそんな顔できるんだな。


ヘタしたら東條さんに匹敵するなぁ…。



さて、とりあえずどこからツッコもう?



「兄貴が、どうしたって?何か嬉しそうだな」



俺がツッコむ前に、ユウ先輩が尋ねた。



「フランスに留学してた兄が、帰ってくるんですよ。あたし、お兄ちゃんっ子なんです」



くしゃっと表情を崩して、アリサが笑った。いつものようなよそ行きの笑顔じゃなくて、多分、本心からの嬉しさに溢れた笑顔。



「へー。なんか、意外だね」


啓一が、相変わらずの笑顔で反応する。


「どっちかというと、お姉さんっぽいのにー。あたし、アリサ先輩みたいなお姉さん欲しかったですー!」

「あっ、ははは。コラ。ユウキちゃん?」



猫のようにアリサに抱き着くユウキちゃんを、アリサは嬉しそうに受け止める。



「ヨシヨシ」

「へへへーっ」



ホントに姉妹みたいだな、この2人。



「ホントはもっと先の予定だったんですけど、飛行機の関係で帰国が明日になったみたいなんです」



セリフの端々から、嬉しさが溢れ出てる。ホントに好きなんだな、兄貴のコトが。



なんか、アレだな。
ツッコむタイミング逃した。
ま、いいか。大体察しついたし。



「留学してたのか、兄貴」

「うん。あれ、あんたにはミッションの時言ったじゃない。今兄貴いないって」


あー。
やっぱね。


あれだ。
俺、いま無性に恥ずかしい!

何言った俺!?



うん。だから、たまには思い出せばいいと思う。俺を通して。それで辛くなったら俺を殴れば─



ストップストップ!
もういい!
やめて!
恥ずい!!



「どうしたのよ、大吾?」

「…や、別に」


“最近ちょっと良いことがあって、情緒が安定してないの”


あァ、こんなセリフも言ってたな、そういや…。兄貴が帰ってくるのが楽しみだったんだな。
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