あの子の隣に座るコツ!
「…きっかけ」


ちょっと考え込むようにうつむいた直紀は、にこっと笑って俺と啓一を見た。



「なんか、なんとかなる気がしてきました!」



おっ、さすが“バカ席”。
切り替え早いね。


「俺、頑張ってみます!」



あァ。頑張ってくれよ。
ユウキちゃんと協力してな?



直紀はいいヤツなんだが、
いかんせん乙女心に疎い。


ま、それも経験か。
ケンカして廃部、とか、
やめてくれよ?






と、
遠慮がちに、ガラガラガラ…と教室の扉が開いた。



「あっ…」



「おう、東條」



ユウ先輩が反応すると、部員全員が東條さんに視線を向けた。アリサに見とれてた進も。



「…こんにちは」



ペコっと可愛らしくお辞儀する、“美少女”東條さゆみさん。



うーん。


さっきアリサが匹敵するとか言ったけど。



やっぱ、
すごいかも。



「なんか俺…何回見ても慣れそうにないです」



小声で直紀が耳打ちした。



「ユウキちゃん、今直紀がなぁー」

「ちょっ!あー!あー!!ナシナシ!今のナシ!もう慣れました!」



はは。
冗談冗談。



「今日は誰に用事だ?」


気さくに話しかけるユウ先輩。


「…今日は、あの、みんなに」


おそるおそる、という言葉が正しいかな?
相変わらずの小さな声で、東條さんが囁き始めた。



「…あの、」



数秒の間。



もじもじと、床を見詰める美少女、



を、見詰める麻雀部員。



「…わたし」



また、数秒の間。
ホントに、効果的に間を使うなぁ、東條さんは。



もっとも、直紀が同じことやったら殴ってるけどね。


「さっさと喋れ!」なんつって。



東條さんは、意を決したように、俺の顔を見た。



大きな瞳が、俺の体温をにわかに高揚させる。



「わたし…麻雀部に、入りたい」
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