あの子の隣に座るコツ!
トン、トン、カチッ。



乾いた麻雀牌の音が、教室に響く。この音と手触りが、たまらない。



「きたァ!ツモ!リーヅモタンヤオドライチぃ」



今度は新立進の調子がいいな。



「やるねぇ、スッスン」



啓一がにこやかに称賛を贈る。こいつもちょくちょくアガってやがるし、余裕がうかがえる。



「そのあだ名やめれ、啓一」



進が顔をしかめる。いいあだ名じゃないか。

スッスンて呼ばれてるんだろ?M組で。



「…啓一!お前口軽すぎ!」



「えっ、内緒の話だったの?僕に言ったらまず大吾に伝わるって思ってもらわなきゃ」



いつものように啓一はにこにこ顔で進の怒りを受け流す。憎めない顔ってのは、こういう顔のことなのかな。



「おぉし、次いくぞ、スッスン」



「ちょ、ユウ先輩まで!勘弁してくださいよ…!」



麻雀部自体は学校からも相手にされない非公認の落ちこぼれ団体。でも、バカ話と笑い声のつまったこの空間は嫌いじゃない。



「…で、ここに…でしょ?だから…は…なの」

「んー」

「ってことは、直紀くんが…だったら、この牌は安全。逆にこの牌は危険でしょ?」

「んー」

「だから、相手が…で、直紀くんが…だったら、…とか、…とか、…とかを捨てればいいわけ」

「んー。んー?」


「ユウせんぱぁい!直紀くんダメです!おバカ過ぎます!」



内容はよく聞こえなかったが、ユウキちゃんがサジを投げたようだ。



「根気よく頼む、波多野」



「あたしがイライラします!無理です!プリンパワーも尽きました!」



どうやら、相当覚えが悪かったらしいな。



「そうか、じゃああとは実戦で教えてやってくれ。2人麻雀は分かるな」



「御意です!ボコボコにします!」



「ユウキ、最初俺がボコボコにされてたの助けてくれたよな、確か?俺の妄想だったかな?」



「黙らっしゃい!愛の鞭です!」



飽きがこないなぁ、この部活は。それにしても、今日は分が悪い。全然アガれないな。



と、再び教室の扉が開いて、人影が姿を覗かせた。



部員の誰かかな、と思って、全員が顔を向ける。



違った。だが見覚えのある女子生徒だ。



「ほォ…」



ユウ先輩が声をあげた。


そうなのだ。
結構な美少女だった。
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