あの子の隣に座るコツ!
東條さんが職員室を出ていくと、逢坂先生がそそくさと近寄って来た。



「お、おい…お前何かしたか?」



「『何かしたか』じゃないでしょ。あのね、先生それでも生徒指導ですか!さっきの完全にセクハラでしたよ!」



「す、すまん。あの人には頭が上がらんのだ。ウチの高校では役職的に上司だし」



全く。大人の事情ってのは厄介だな。このなよなよした喋り方の男が全校生徒4500人の恐れる、生徒指導の逢坂哲雄とはね。



「…先生。“2-Cの日比野大吾が石川先生の秘密を握ってる”って、職員室内で噂にしといてください」



もうこんな人たちに頼ってられない。“クラス首席”は俺が守る!

ついでに東條さんのポイントもアップ!



「え、なんで?」



「弱味を握ることで、東條さんに手出しさせないように牽制します」



「…分かった。俺たちもあの人のセクハラには頭を悩ませているんだ。校長や教頭にも相談したのだが、この事件が公になることを恐れて取り合ってくれない。我々は立場上積極的な活動ができない」



いつの間にか、逢坂先生の後ろには何十人もの先生たちがずらりと並んでいた。



「頑張ってくれ。くれぐれも校則に触れない範囲でな」



「お任せあれっ」



親指を力強く突き立て、自信満々に答えると、俺も職員室を颯爽と出ていった。



職員室を出て数歩進んだところで、



「おっ…、君は」



トイレから帰ってきたらしい石川が俺に気付いた。



「助かったよ、教えてくれてありがとねェ」



すれ違いざまに、なんか感謝されちゃったよ。ホントにずれてたんだな。ていうか、カツラの噂は本当だったんだな。



小さく会釈して、俺も再び歩き出す。



とりあえず、やることができた。



石川の魔の手から、東條さんを守らねば!



キーンコーン…



あ、しまった。
また遅刻だ…
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