あの子の隣に座るコツ!
昇降口を抜けて靴を履き替えた“最バカ”と“クラス首席”は、前後の距離を律儀に保ったまま、校門まで歩を進める。



東條さんの驚異的な無口キャラにもようやく慣れて、気まずさも薄らいできていた。



「家はどの辺?」

「…飯田が丘」

「駅前まで送ろうか」

「…いい」

「…だ、がおか?」

「……」



冗談が通じないっていうのも問題かもしれない。ユーモアは会話の上で重要なツールだ。



しょうもなさすぎてスルーされただけかもしれないけど。



「俺、家近いし構わないよ。ホラ、もう日も暮れるし」

「…いつもひとり。大丈夫」


やっぱりちょっと警戒されてるな。あんまりしつこく誘って嫌がられるのもバカらしい。



「そっか。大丈夫なら良いんだけどね」

「…ごめんなさい」

「イヤ、気にしないで」



風に飛ばされそうなか細い声に返事をすると、ようやく校門が見えてきた。



俺の家は校門を出て右。最寄り駅は左だ。



「じゃあ、気をつけて」



俺がそう言うと、東條さんは小さくコクリと頷いて、左手に伸びる下り坂をトコトコと下って行った。
< 31 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop