あの子の隣に座るコツ!
「まぁ…話してはいますよ、人並みに」



進が気まずそうに反応して、啓一の方を見た。「お前はどうなんだ?」とでも言いたげに。



「僕も、会話ならしてますよ。どちらかと言えば話しかけられる方だと自負してますけど」



さらっとモテ男発言しやがって。いつものにこにこ顔にはイヤミのカケラもありゃしないが、逆にそこがムカつく。分かるだろ?



そして、「大吾はどうなの?」って感じの視線を俺に向ける啓一。お前と違って女の子に話しかけられたことなんぞ、数えるほどしかないっつーの。



「俺も、その、普通っすよ」



もごもごと返答して、3人の視線から逃げるように手牌に目をそらす。



「泉さんと毎日のようにしゃべってるじゃないか」



啓一が言わなくてもいいことをポロリとこぼす。



「え!ホントに!?」



ホラ。進が食い付いてきたじゃないか。



「あれは会話じゃない。非難と反駁だ。あんな毒舌女と会話なんて成立する気がしない」



「泉さん、大吾以外とは普通なのにね」



うーん、と、考え込むように啓一が首をかしげた。



「よっぽど俺のことが嫌いなんだろうよ」


「あるいはよっぽど日比野のことが“好き”か、だな」



いたずらっぽくユウ先輩が笑った。


「勘弁してくださいよ。あいつに限ってそれは無い。確信があります」



考えただけで恐ろしい。
あのアリサが。


“とりあえず死ね”とか
“目障り”とか
“殺す”とか
“頭蓋骨を踏み砕かれればいい”とか


悪口を越えてもはや呪詛に近いセリフを吐き続けるあのアリサが。


「ぜっったいに無いです」

「ロン、日比野」


「うぁっ!何それ!アリサの呪いか!?」



心が恐怖で揺さぶられる中、何となく捨てた牌でアガられてしまった。


ユウ先輩の巧妙な心理作戦か?勝つためならなんでもやるんだな、この人。


「甘いなァ、日比野」


不敵な笑みを浮かべるユウ先輩。ちきしょう、男前だな、オイ。



「…次は負けませんよ。俺が親ですからね」


ジャラジャラと牌の山を崩しながら、負け惜しみをこぼす。くそ…アガりてェ…。
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