あの子の隣に座るコツ!
「問題用紙を…フム」


何が気になったのか、ユウ先輩は手牌を睨んだまま、考えに耽(フケ)るように左手でアゴをさすった。



その真面目くさった顔が、なんか気になる。



「…良からぬこと考えてません?」


「考えてるよ」



やっぱりか…。
その悪そうな顔。
“秀才席”の人間の顔じゃないですって。



ユウ先輩は突然、ガタリと音をたてて雀卓の上に飛び乗った。


ジャラァっと麻雀牌がユウ先輩の足に蹴飛ばされて、床にバララっと散らばる。

「うぉっ!」

「わっ!」


同じ雀卓を囲んでいた進と啓一が、声を上げてユウ先輩を見上げた。



「な、なんだ?」



タケシ先輩も驚いてユウ先輩を見る。子分3人と1年生も、部長の突飛な行動に釘付けになった。



「今年度最初のミッションを発表する!」



どこかの司令官気取りか、ユウ先輩が教室中に響く声で叫んだ。



始まった。
麻雀部恒例。
ミッション・中村悠一プレゼンツ。



「でたぁーッ!」

「ユウ先輩が大会のない麻雀部の活動に、ささやかなスリルとアクセントを折り込むため考案した、“ミッション・中村悠一プレゼンツ”!」

「合法ミッションから非合法ミッションまで、面白ければ即実行のぶっつけ企画!」



子分3人組よ、
分かりやすい説明をありがとう。



お聞きの通り、この麻雀部は不定期に“ミッション”なるものを遂行するのだ。



もちろん、ミッションと言っても、そう大それたものばかりではない。



ボーリング大会、
ラーメン食べ歩き、
バーベキュー、


ただのお楽しみイベントがほとんどなのだが、



学校に忍び込んでの肝試しだったり、
教室にアルコールを持ち寄っての飲み会だったり、

体育館での花火大会だったり、



社会通念上よろしくないイベントもしばしば行われている。



まァ、合法であれ、非合法であれ、あの“ミッション”を面白くないなんて言うヤツがいたら、是非ともここに連れてきて貰いたいね。



「…それで?今回は合法ですか、非合法ですか?」



聞くまでもないような質問だろうがな。一応確認だ。もしかしたら週末に草野球大会をやるつもりなのかもしれないし。


しかし案の定ユウ先輩はニヤリとワルそうな笑みを返して、口を開いた。



「非合法」
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