あの子の隣に座るコツ!
「今回のミッションはズバリ、“テスト問題暗奪作戦”だ」



何かが乗り移ったかのような芝居がかった口調で、ユウ先輩が演説を続ける。



「お前たちには夜の校舎、職員室に忍び込み、2年生のテスト問題を5教科分盗み出してもらう。もちろん俺も参加するが」



そう言いながらユウ先輩は白チョークを手に取り、黒板に向かって校舎の見取り図らしき絵をカツカツと描き始めた。



「調査の必要はあるが、おそらく問題用紙自体は職員室のどこかに保管されるはずだ」



“職員室”と書かれたフロアを赤いチョークでぐるりと囲むユウ先輩。楽しそうだな。



「外で指令を送るグループと、実動グループに別れた方が良さそうですね」


「それは良いけど、テスト問題が一ヶ所に集中している可能性は低いんじゃないか?各教科の先生が保管してるのかも」


「むー、だとしたら、最悪10ヶ所以上に問題用紙が散らばってることになりますね?」


「じゃあ実動部隊の人数はそれなりに増やさないと」


啓一、進に続き、ミッション初挑戦のユウキちゃんと直紀も話し合いに積極的に参加している。かなりの適応能力だな。



「俺もそう思っていたところだ。実動班と指令班に別れ、ミッションを進めていく。指令班のリーダーは、永野。頼めるか?」



「いいですよ。僕、運動には自信ないし。適材適所ですね」



柔和な笑みを作った啓一が、ユウ先輩の打診を快諾した。



「よし。実動班のリーダーは俺。班の振り分けはお前たちに任すけど、どうする?」



「あ。じゃあ俺、実動班行きます」



「日比野、実動班…っと」

メンバー構成を黒板に書いていくユウ先輩。


「あ、じゃあ俺も実動行きます!楽しそうだし」


「直紀は指令班には向いてないからな」


「ンなっ!大吾先輩には言われたくないです!」



“バカ席”同士の口論をよそに、黒板には実動班の欄に杉山直紀の名前が書かれる。



「波多野はどうする?実動いっとくか?」


「あたしはァ、指令班で直紀くんたちをサポートします!」


「オーケー。波多野は指令班…」



ユウ先輩主導の下、着々と計画が形になっていく。



確認のため言っておくが、
もちろん校則違反だ。


見つかれば停学じゃあ済まないかもな。
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