あの子の隣に座るコツ!
コツその7「ケガと情報と保健室。」
梅雨時。
雨降り。
濡れた廊下。
一分一秒を争う非常事態。風のように階段を駆け上がった俺の前に立ちはだかるのは、尋常じゃないほど滑りやすい2年部の廊下。
全長200メートル(推定)の距離を駆け出そうと、勢いよく出した一歩目。
「うおっ!?」
ツルンとマンガのように滑った俺の体は、空中で1回転。
「がっ…!」
鈍い音を響かせて、アゴを思い切り床に打ち付ける。
「……!……!!」
上のエクスクラメーションマークと3点リーダは、もちろん俺の言葉─いや、言葉ではないんだが。
いわゆる“悶絶”ってやつだ。声にならない声、と言えば、なにやら歌の歌詞にでもありそうな表現だけど。
「く…諦めてたまるかっ」
何とか立ち上がった俺は、揺れる視界のなか、再び床を蹴ってスピードに乗る。
陸上部顔負けのフォームで廊下を駆け抜け、C組の扉をガラッと開ける。
開けた瞬間、クラスが一瞬ざわついた。
「ハァ…ギリギリ…」
そう呟いた矢先、ちょうど始業のチャイムが鳴り響く。
「…日比野」
担任の稲垣が、苦虫を噛み潰したような顔で俺を見ている。
「ギリギリセーフでしょ!」
「それは良いが…アゴ打ったのか?」
「…え」
言われてアゴをさすると、なるほど先程クラスがざわついた意味が分かった。
さすった手に、嫌ァな感触。
「これは…見事な流血」
「ばか、感心してないで保健室行ってこい!」
稲垣が困惑気味に怒鳴った。多分ハタ目には相当刺激的な絵ヅラになっているんだろうな。
「せっかく間に合ったのに」
「そんな血まみれの顔でHRを受けられてはこっちがたまらん」
「ちょっとは心配して下さいよ、冷たいな」
「それだけ減らず口が叩ければ大丈夫だろ。血だけ止めてもらって来い」
“早くHR始めさせろ”オーラが体からにじみ出てるぞ。こっちはHRに間に合うために走って、転んで、流血してるっていうのに。
薄情な担任だよ、本当に。
雨降り。
濡れた廊下。
一分一秒を争う非常事態。風のように階段を駆け上がった俺の前に立ちはだかるのは、尋常じゃないほど滑りやすい2年部の廊下。
全長200メートル(推定)の距離を駆け出そうと、勢いよく出した一歩目。
「うおっ!?」
ツルンとマンガのように滑った俺の体は、空中で1回転。
「がっ…!」
鈍い音を響かせて、アゴを思い切り床に打ち付ける。
「……!……!!」
上のエクスクラメーションマークと3点リーダは、もちろん俺の言葉─いや、言葉ではないんだが。
いわゆる“悶絶”ってやつだ。声にならない声、と言えば、なにやら歌の歌詞にでもありそうな表現だけど。
「く…諦めてたまるかっ」
何とか立ち上がった俺は、揺れる視界のなか、再び床を蹴ってスピードに乗る。
陸上部顔負けのフォームで廊下を駆け抜け、C組の扉をガラッと開ける。
開けた瞬間、クラスが一瞬ざわついた。
「ハァ…ギリギリ…」
そう呟いた矢先、ちょうど始業のチャイムが鳴り響く。
「…日比野」
担任の稲垣が、苦虫を噛み潰したような顔で俺を見ている。
「ギリギリセーフでしょ!」
「それは良いが…アゴ打ったのか?」
「…え」
言われてアゴをさすると、なるほど先程クラスがざわついた意味が分かった。
さすった手に、嫌ァな感触。
「これは…見事な流血」
「ばか、感心してないで保健室行ってこい!」
稲垣が困惑気味に怒鳴った。多分ハタ目には相当刺激的な絵ヅラになっているんだろうな。
「せっかく間に合ったのに」
「そんな血まみれの顔でHRを受けられてはこっちがたまらん」
「ちょっとは心配して下さいよ、冷たいな」
「それだけ減らず口が叩ければ大丈夫だろ。血だけ止めてもらって来い」
“早くHR始めさせろ”オーラが体からにじみ出てるぞ。こっちはHRに間に合うために走って、転んで、流血してるっていうのに。
薄情な担任だよ、本当に。