あの子の隣に座るコツ!
コツその8「バレタ!」
放課後。
麻雀部へ続く廊下が、こんなにも苦痛に感じたことが今まであっただろうか。
「こんにちはぁ…」
3年K組の教室の扉を、そろそろと開ける。
「よー」
「お疲れーす」
教室では、新立進と杉山直紀が雀卓を作っているところだった。
「あれ、ユウ先輩は?」
「トイレ」
俺の問い掛けにぶっきらぼうに答えたのは、2年M組・新立進。
「お前、週明けにはテストだけどちゃんと勉強してるのか?」
「今は週明けのテストより週末のミッションだろ」
「…直紀といい、お前といい、“バカ席”はテストを甘く見すぎてる」
真面目で勉強家ってところが、進のアイデンティティーなんだけどな。親みたいなこと言わないでくれよ。
「ちゃんと勉強してるよ。日本史と世界史だけ」
「2教科だけ?お前な、そんなんで“秀才席”座れると思ってんのか?」
「期末のあとはどうせ夏休みだ。次のテストは9月。急ぐことないさ」
「…呆れてものも言えないよ」
進はしかめっ面の上に大きなため息をついて、教室のすみに立て掛けてある麻雀マットを取りに歩いた。
「なんか元気なくないですか?大吾先輩」
献身的に雀卓作りを手伝っていた直紀が、俺の発するマイナスオーラに気付いたようだった。
「ちょっと野暮用が出来てしまってね。頭を痛めてる」
愚痴をこぼしながら、俺は背面黒板に歩を進め、ロッカーの中に隠してある麻雀牌の箱を手に取った。
「野暮用って?ユウ先輩にか?」
進はそう尋ねながら、筒状に丸めたマットを槍投げのように俺に放る。
「まぁね」
マットを受け取った俺はそれを今度は直紀に放る。
「おっとっと…」
直紀はそれを2、3度ファンブルしながらも、先ほどくっつけた机の上に広げた。
「また何かやらかしたんですか?」
「ミッションのことアリサに聞かれちゃってさ、参加させろっつってうるさいんだ」
事情を説明しながら、さらに手に持った麻雀牌の箱も直紀に投げる。
「よっ…、そいつは大変ですね」
直紀はそれを器用にキャッチすると、雀卓上にジャラァッっと牌をぶちまけた。
空になった箱を手近な机に置くと、じゃらじゃらと手触りを確かめるように牌をかき混ぜる。
麻雀部へ続く廊下が、こんなにも苦痛に感じたことが今まであっただろうか。
「こんにちはぁ…」
3年K組の教室の扉を、そろそろと開ける。
「よー」
「お疲れーす」
教室では、新立進と杉山直紀が雀卓を作っているところだった。
「あれ、ユウ先輩は?」
「トイレ」
俺の問い掛けにぶっきらぼうに答えたのは、2年M組・新立進。
「お前、週明けにはテストだけどちゃんと勉強してるのか?」
「今は週明けのテストより週末のミッションだろ」
「…直紀といい、お前といい、“バカ席”はテストを甘く見すぎてる」
真面目で勉強家ってところが、進のアイデンティティーなんだけどな。親みたいなこと言わないでくれよ。
「ちゃんと勉強してるよ。日本史と世界史だけ」
「2教科だけ?お前な、そんなんで“秀才席”座れると思ってんのか?」
「期末のあとはどうせ夏休みだ。次のテストは9月。急ぐことないさ」
「…呆れてものも言えないよ」
進はしかめっ面の上に大きなため息をついて、教室のすみに立て掛けてある麻雀マットを取りに歩いた。
「なんか元気なくないですか?大吾先輩」
献身的に雀卓作りを手伝っていた直紀が、俺の発するマイナスオーラに気付いたようだった。
「ちょっと野暮用が出来てしまってね。頭を痛めてる」
愚痴をこぼしながら、俺は背面黒板に歩を進め、ロッカーの中に隠してある麻雀牌の箱を手に取った。
「野暮用って?ユウ先輩にか?」
進はそう尋ねながら、筒状に丸めたマットを槍投げのように俺に放る。
「まぁね」
マットを受け取った俺はそれを今度は直紀に放る。
「おっとっと…」
直紀はそれを2、3度ファンブルしながらも、先ほどくっつけた机の上に広げた。
「また何かやらかしたんですか?」
「ミッションのことアリサに聞かれちゃってさ、参加させろっつってうるさいんだ」
事情を説明しながら、さらに手に持った麻雀牌の箱も直紀に投げる。
「よっ…、そいつは大変ですね」
直紀はそれを器用にキャッチすると、雀卓上にジャラァッっと牌をぶちまけた。
空になった箱を手近な机に置くと、じゃらじゃらと手触りを確かめるように牌をかき混ぜる。