あの子の隣に座るコツ!
トン、トン、カチッ。


「ツモっ」



『エェっ!?』


3度目のコールと、3度目の驚嘆が、教室中に高らかに響く。



「何点ですか、ユウ先輩?」

「…12000点、だな」


アリサの後ろに立っているユウ先輩が、苦笑いで点数を伝えた。


「やった!ってことは、親の大吾から6000点、新立くんと直紀くんから3000点、だっけ?」



子供のようにはしゃぐ泉アリサ。さっきから3連続でアガってやがる。



「すっごぉ…」


公開された牌の並びを見て、直紀が感嘆の声をあげた。



確かに、恐ろしいまでのヒキの強さだ。ビギナーズラックで片付けていい範囲を逸脱しているな。



「イカサマしてるんじゃないだろうな」


「実力よ。じ、つ、りょ、く」



「あーあ。俺持ち点無くなっちゃったよ」



進が参りましたとばかりに両手を挙げ、手牌をジャラッとバラした。



「泉先輩、初心者とかウソでしょ?」


「ホントよ。麻雀牌を直で触ったのは、今日が初めて」



直紀の問い掛けに、優雅な微笑とともに答えるアリサ。



まるで普通の女の子のようだ。男子を5メートルも殴り飛ばせるクセに。



「ネットとか、ゲームとかは?」


今度は進が尋ねた。そういやぁ、アリサの最初の2勝は進がフリ込んだんだったな。



「ネット麻雀なら、ちょっとかじったくらいかな。ネットって勝手に役とか計算してくれるから、得点はさっぱり分からないんだけど」



「それでそこまで打てるんなら、大したもんだ」



アリサの後ろから、ユウ先輩も称賛の言葉を送った。



「ホントですか?嬉しい」

「ああ。杉山にも見習って欲しいよ」



アリサを誉めながら、ユウ先輩が直紀を見て、ニッと笑った。



「うん、確かに」


「アリサに麻雀教わったらどうだ?」


「いや、もう…ホントに、返す言葉もありません」



進と俺の追い撃ちに直紀がペコッと頭を下げると、アリサがクスリと笑った。
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