あの子の隣に座るコツ!
「どうしたんだよ、そんなとこに突っ立って」


“わ、あのバカ…!”

“おいっ、直紀…!”



俺と進の小声の制止も届かず、直紀は軽快なステップで、ユウキちゃんの前へ歩を進めた。



「なァ、ユウキ?」


「…直紀くんの」


「え、なに?」


「直紀くんの浮気者ぉッ!!」


「ぶぁっ!?」



フルスイング。



大量の教科書と辞書の詰まったバッグが、直紀の横っ面へ鈍い衝突音と共にジャストミートした。



直紀の身体は空中で3回転、そのまま真横の黒板に頭から激突した。



「サヨウナラ皆さんいつまでもお元気で!」


「ちょ、あれ?おい待て!ユウキ!?」



教室を飛び出して行ったユウキちゃんを、直紀は何が何だか分からない様子のまま、頭からダラリと血を流した怖すぎる顔で追いかけていった。




──嵐が去った後のように、3年K組を静けさが包む。



「…あたしのせいじゃないよね?」


2人の飛び出して行った扉から俺と進に視線を戻して、アリサが小首を傾げて笑った。


「まァ…今のは」


「直紀のKYさが悪い」


進に続いて俺もアリサの肩を持つ。



「すぐ仲直りして帰ってくるさ。さァ、続き続き」



ユウ先輩はいつも通りの余裕の笑みで、空いた直紀の席に座った。



「ヨシ。次も勝つぞぉ」



アリサも全く気にする様子を見せず、不慣れな手つきで麻雀牌をジャラジャラとかき混ぜる。



直紀のヤツ。女心ってもんを全く分かってない。

いや、今回は不運な偶然も重なったんだけどさ。

ユウキちゃん登場のタイミングも最悪だったもんな。



日頃の行いが、余程悪かったんだろう。
ご愁傷サマ。はは。
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