あの子の隣に座るコツ!
ザザザッ。


“こちら啓一。異状ないかな、大吾?”


無線機から、心なしか緊張した様子の声が届く。


「今の所な」



啓一は、本館全体を見渡せる中庭の植木に身を隠し、双眼鏡を駆使しながら指令を送っているらしい。


進はタイムキーパー。それと、正門でイレギュラーな訪問者(例えば忘れ物を取りに来た教師だとか)にも備えている。



ユウキちゃんは警備室の正面を陣取り、啓一よりも詳細にその辺りの情報を伝える係だ。



“了解。多分僕も見えると思うけど、職員室に着いたら連絡よろしく”



「はいよ」



プツリと通信が切れたと思うと、すぐにまたザザッ、と無線機が音をたてる。



“大吾と泉さんが出てから4分経ちました。第3ペア、潜入してください”


進の声だ。第3ペアは誰だったかな?


“了解”
“了解ッス!”

あぁ、ユウ先輩と直紀かな、この声は。


俺とアリサは第1ペア。


俺たちが潜入後、2分おきにふたりずつ忍び込む手筈だ。その方が機動力も上がるし、万一警備員に見つかった時に被害を抑えられる。


第2ペアは確か、タケシ先輩と、あー…えぇっと。


…3兄弟のうちの誰かだ。


必然的に最終ペアは3兄弟のうち残ったふたりか。


タケシ先輩と一緒になった方は、さぞやくじ運の良さを残りのふたりに自慢しただろうな。



思案を巡らすうちに、俺とアリサは4階に到着。



「そういやぁ、職員室って鍵開いてるのかな」

「なに、それ。独り言?まさかとは思うけどあたしに聞いてる?」



「後者だと言ったら」

「無視するわ」



「…じゃあ、独り言だ」

「あっそ。大丈夫よ。あたしが鍵持ってるから」



「はっ?なんで?」

「事務室で拝借したに決まってるじゃない。バカなの?死ぬの?」



「バカじゃない。死なない」

「あぁ、いいのよ、独り言だから。気にしないで」



「……」


ホントに。

恨むぞ、くじ運の無さを!!
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