あの子の隣に座るコツ!
「こちら大吾。職員室前に到着した」


“了解。じゃあ、鍵を泉さんに開けてもらったら、みんな集まるまで待機ね”


「オッケー」


啓一の指令通り、職員室前の扉の鍵をアリサが開け、全員がそろうまでひとまず待機。



非常口の光で緑色に怪しく染まる廊下は、いつ、何が出てきてもおかしくないほど不気味で、天敵とはいえアリサが隣にいるのは少し心強い。



「…ついにここまで来てしまった」

しかも、東條さんを助けるという目的を失ってまで、だ。


このミッションの意義を、ミッション遂行前に無くしてしまったのに。


「悪かったって言ってるじゃない」

「心の声を読むんじゃない」



でも、本当に。
このミッションに意味なんてあるのかな?
ここまできて自信を無くしてしまった。



ミッションを首尾よく達成できて、東條さんの近くに座れたとしても、東條さんはそんな俺からの助けを必要とするんだろうか。



校則や、それこそ法に触れてまで、みんなを巻き込んで(特にタケシ先輩はミッションどころじゃないだろう)、東條さんを助けられないミッションに、なんの意味があるのかな?



「…難しいこと考えてない?アンタ」


ぐるぐると連鎖する負の思考を断ち切るように、隣に立つアリサが口を開いた。


「えっ?」

「独り言。聞き流していいから」


そう断って、アリサが続けた。



「意味なんてなくて良いじゃない。みんな楽しくてコレに参加してるんだから」


茶髪のショートヘアーを右手でさらりとかきあげて、淡々と喋る。



「楽しいだけじゃダメなの?それだけに意味を見いだすコトは、間違ってる?」


「…いや、そうだけど」



「もちろん、手段は褒められたもんじゃないけど。アンタにとってはこうするしか道がないじゃない」



「恥ずかしながら、ね」



「むしろ、そういう手段を肯定してまでさゆみを助けたいってことでしょ。それが分かるからみんな協力してるのよ、きっと」



なんか、

アリサがこんなに喋るのは、初めてかもしれない。

ちょっと新鮮だ。




「まぁ…あたしは楽しそうだから参加してるだけだけど」


「…やっぱ、お前ツンデレ?」



「落とすわよ、窓から」

「す、すまん」
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