あの子の隣に座るコツ!
“オーケー。じゃあ、始めましょうか”


啓一が落ち着いた声で言った。


“何かあったら連絡します。ミッションも大事ですけど、基本は保身最優先です。警備員に不穏な動きがあったら、ミッション中止も視野に入れて行動してくださいね。その辺りの判断はユウ先輩に委ねます”


「分かった」


ユウ先輩が短く返答すると、啓一は“では、御武運を”とだけ伝えて、通信を切った。


ザザザッ。
再び通信が入る。


“今、12時20分です。遅くとも12時50分には職員室を抜けた方がいい。時間は逐一報告するから、なんとか50分までに問題を見つけてください”


“皆さん、ファイトですっ!”


「サンキュー」


進の忠告とユウキちゃんのエールを受け、礼を言ったユウ先輩は、俺たちの顔を見回す。


「さて。帰るなら今のうちだが。警備員もまだ10分は動かないから、楽に戻れるぞ」



悪そうな顔でユウ先輩が声をかける。


そんな奴いるわけないって、そう思ってるクセに。


「バカ。今さら引き下がったら、野球部の名折れだ」

タケシ先輩がフンと鼻をならして、胸を張った。楽しそうな顔で。


「自分らもです!」

「タケシ先輩と一心同体ですから!」

「どこまでもついて行きます!」



3兄弟も、タケシ先輩に続いて頼もしい声をあげる。


「今さら引き返せませんよ、麻雀部エースとしてね!」


いつからエースになったかは知らないが、直紀もやる気だ。


「日々野と泉もいいのか?見つかったら停学じゃ済まないかもしれないぞ」


…アリサが、こっちを見ている。


応えるように口を開く。



「停学が怖くてミッションが務まりますか」


そうさ。リスクを負わなきゃつまらない事だってあるんだ。


「やってやりますよ。嫌われたって、東條さんを助けるんだ」

「…いいカオしてるぞ、大吾」


それだけ言って、ユウ先輩はガラリと勢いよく職員室の扉を開けた。



「行くぞ。ミッションスタートだ」


先輩の言葉に、メンバーは皆各々うなずいて職員室へ飛び込んだ。



みんなの後に続いて職員室に入ろうとした俺だったが、服の端を、アリサが引っ張った。


「うぉっ、な、なに?」


「…別に」

すぐに手を離す。


あぁ。
把握。
ツンデレね。


「殺すわよ」

「だから心を読むなっつの」
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